明治神宮
明治神宮(明治神 宫)は、東京都渋谷区の、JR原宿駅前にある大神社。
勅祭社であり、戦前の社格は官幣大社に列し、戦後は神社本庁の別表神社となった。初詣者数は300万人以上で全国で一位とされる、日本を代表する神社の一つ。
大正9年、明治天皇(1852-1912年)とその正后である昭憲皇(太)后(1849-1914年)を祀るため、不毛の荒野に森林ごと造成し創建。
明治天皇の御陵は天皇自身の遺志で、故郷である京都に置かれる事となったため、東京府や民間人が代替として神社の創建運動を展開し、明治神宮が創建される運びとなった。記念事業として設立されたという点において、近代になって出現した新しいタイプの神社である。これは、明治維新後、神道から宗教としての教派神道が分離され、神社神道自体は宗教にあらずと位置づけられたことの、一つの帰結である。
明治という時代を体現する天皇を象徴するように、伝統的な祭祀空間である内苑と、近代的(西洋的)な公園空間である外苑で構成される。なお、通常は単に「明治神宮」と呼んだ場合は内苑を指す。(外苑については明治神宮外苑の記事を参照)。
南参道
地名「表参道」は、内苑と外苑を結ぶ明治神宮の表参道として開かれた事に由来する。ケヤキ並木もこの時整備された。この通りは土木学会選奨土木遺産となっている。
表参道駅前交差点と、明治神宮駅前交差点にも同規模の大灯篭がある。
神宮橋は、橋の本体は昭和57年に架け替えられたが、親柱は大正9年のものが残る。
鳥居の右にある南制札は国指定重要文化財。
南参道の第一鳥居は令和4年、国産の杉で建て替えらた。
神橋は国指定重要文化財。大正9年架橋で、RC造・石張り。人工の渓流上に架かる。
神橋下を流れる渓流も大正9年創建時に造られたもの。
明治神宮ミュージアムは隈研吾の設計で令和元年竣工。館内は撮影禁止。
フランスのブルゴーニュから奉納されたワイン樽。明治天皇はワインを好んだという。
明治神宮の大鳥居(南参道第二鳥居)は高さ12mで、日本最大の木造明神鳥居だと称している。
ただし、高さだけなら他社にこれ以上に高い「木造」の「明神鳥居」もあり、何が最大なのかは不明。
なお、後述のように、旧大鳥居がさいたま市の大宮氷川神社に移築現存する。
社殿
戦前の明治神宮の社殿は伊東忠太による設計だったが、中核部分は第二次大戦の空襲で焼失し、昭和33年に角南隆(昭和期の代表的な神社建築家)によって再建された。ただし、南神門と回廊の南半分、南手水舎、客殿(旧宿衛舎)は大正9年創建当時のものが残る。
再建の際、参拝者の収容力向上のため社殿構成が変更され、戦前は「神門→拝殿→中門→(祝詞舎→)本殿」という構成だったものが、「神門→外拝殿→内拝殿→祝詞殿→本殿」という構成に変更された。
一般参拝者が参拝するのは外拝殿であり、その先に見えるのは内拝殿で、本殿は見る事ができない。
南玉垣鳥居は平成28年に再建されたものだが、その両脇から伸びる玉垣は国指定重要文化財。
南玉垣鳥居の左手前にある南手水舎は国指定重要文化財。大正9年竣功。
南玉垣鳥居の右手前にある祓舎は国指定重要文化財。大正9年竣功。
南参道第三鳥居を潜った左側にある宿衛舎は国指定重要文化財。大正9年竣功。
南神門は国指定重要文化財。大正9年竣功。
東西南の各神門から外拝殿の前までを外院と呼ぶ。
外院廻廊の南神門~西神門、南門~東神門、東神門以北は戦災焼失を免れ大正9年創建時のものが残るが、西神門以北は昭和33年の再建。再建部分を含め、これら4棟とも国指定重要文化財。
外拝殿は昭和33年再建で国指定重要文化財。少し前までは外拝殿の中に入って参拝する形式だったが、現在は外拝殿の外から参拝するようになった。
外拝殿の奥にある内拝殿も昭和33年再建で国指定重要文化財。現在は内拝殿の撮影も禁止(この写真は撮影可だった頃のもの)。外拝殿、内拝殿、東西の内院渡廊に囲まれて中庭がある。内院渡廊も国指定重要文化財。
なお、これらの奥にある祝詞殿、本殿、宝庫、神庫、内透塀及び北門、神饌所及び渡廊、旧祭器庫、北廻廊2棟、外透塀3棟、北神門も国指定重要文化財だが、見ることはできない。しかしGoogle Mapsの航空写真では確認することはできる(マーカーの位置が本殿)。
鳥居の先にある西神門は国指定重要文化財。大正9年竣功。
写真には写っていないが、鳥居の両脇から伸びる玉垣も国指定重要文化財。
西神門の手前にある西手水舎も国指定重要文化財。大正9年竣功。
鳥居の先にある東神門は国指定重要文化財。大正9年竣功。
写真には写っていないが、鳥居の両脇から伸びる玉垣も国指定重要文化財。
東神門の手前にある東手水舎も国指定重要文化財。昭和6年竣功。
桃林荘は、明治天皇長子・建宮の御殿「桃華殿」として明治初期に竣工。江戸末期頃に一條家の茶室として建てられた華山亭が付属する。東京都選定歴史的建造物。
現在は披露宴などの会場として利用されており、それ以外の一般客には非公開(建物背面の屋根が確認できるのみ)。
北参道と西参道
北参道は、JR総武線・都営大江戸線の代々木駅、及び東京メトロ副都心線の北参道駅からの最寄り駅。
また西参道は、小田急線の参宮橋駅からの最寄り駅。
代々木口(北門)の鳥居の左にある北制札は国指定重要文化財。
参宮橋口(西門)の鳥居の右にある西制札は国指定重要文化財。
明治神宮の森
境内の森は、日本人の伝統的な神観念に合致した森厳な森林となるよう、ドイツ林学に基づき荒地に計画的に造成された人工の森である。
造成前は境内地に相当する地域の樹木は1万5千本だったが、造営後には12万本となっていた。樹木の選定に関しては、神々しい杉林を推す派と武蔵野の常緑樹の自然林を推す派があったが、大気汚染や風土などの状況から自然林が選択された。
計画では、造営から百数十年~二百年後に東京地方特有の自然林が出現し、永久に維持されるはずだったが、実際には林相の変化が計画より速まっているという。
明治神宮の造営の前後の対比の写真。『大都会につくられた森 明治神宮の森に学ぶ』(松井光瑶・谷本丈夫・内田方彬・北村昌美著、第一プランニングセンター刊、1992年)より。このように、荒野に鬱蒼とした森林が人工的に造成された。手前の線路は山手線。
御苑
御苑に相当する部分は江戸時代は彦根藩主井伊家の下屋敷跡で、明治以降は皇室の花菖蒲園となっており、明治神宮創建に際してその一部として取り込まれた。
御苑に関する詳細は、「明治神宮 御苑」の記事を参照。
宝物殿前広場
宝物殿
境内北端にある宝物殿は、大江新太郎の設計で、大正10年にRC造で竣工。
当館を構成する正門、中倉、東西北の廊、東西の渡廊、東西の橋廊、東西の倉、車寄、事務所の13棟が国指定重要文化財。
通常は非公開だが、定期的に公開される。
宝物殿に関する詳細は、「明治神宮 宝物殿」の記事を参照。
明治神宮の主な年中行事
正月 - 初詣
明治神宮は初詣客を日本一集める神社仏閣として知られ、三が日に三百数十万人の参拝者があるとされる。この行事についての詳細は「明治神宮 初詣」の記事を参照。
成人の日 - 成人の日祝賀百手式
成人の日である1月の第2月曜日には、小笠原流の弓術儀礼である百手式が奉納される。この行事についての詳細は「明治神宮 成人の日祝賀百手式」の記事を参照。
建国記念の日 - 紀元祭
建国記念の日(2月11日)に催される紀元祭においては、大規模な建国記念の日奉祝パレードが奉納される。この行事についての詳細は「明治神宮 紀元祭」の記事を参照。
5月2~3日 - 春の大祭
春の大祭は、5月2~3日を中心に開催される、当社では秋の大祭に次ぐ祭礼。この行事についての詳細は「明治神宮 春の大祭」の記事を参照。
8月下旬 - 原宿表参道元氣祭 スーパーよさこい
「原宿表参道元氣祭 スーパーよさこい」は8月最終土日に催される、地元商店街主催の明治神宮奉納イベント。全国から集ったチームが境内周辺の複数の会場でよさこい踊りを披露する。この行事についての詳細は「原宿表参道元氣祭 スーパーよさこい」の記事を参照。
11月1~3日 - 秋の大祭
秋の大祭は、11月1~3日を中心に開催される、特に大規模な祭礼。特に11月3日(明治天皇の誕生日)には天皇から勅使の派遣があり、流鏑馬ほか多数の古武術演武が奉納される。この行事についての詳細は「明治神宮 秋の大祭」の記事を参照。
勤労感謝の日 - 新嘗祭
勤労感謝の日である11月23日には新嘗祭が行われ、境内には10基前後の野菜で出来た宝船が奉納展示される。この行事についての詳細は「明治神宮 新嘗祭」の記事を参照。
外部に移築された明治神宮の建物
大宮氷川神社 二ノ鳥居
さいたま市の大宮氷川神社の二ノ鳥居は、明治神宮の大鳥居を移築したもの。
新田神社 本殿・幣殿
大田区の新田神社の本殿・幣殿は、明治神宮が戦災焼失した後に建てられた仮社殿を、昭和35年に移築したもの(社殿のうち拝殿は、移築時に新築)。