新宿御苑
新宿御苑は、東京都新宿区・渋谷区の、東京メトロ丸ノ内線・副都心線・都営新宿線の新宿三丁目駅より徒歩5分の地に位置する、近代を代表する大庭園。
その敷地は、徳川家康が天正18年(1590年)に家臣の内藤清成に授けた江戸屋敷の一部で、内藤家が後に信州高遠藩主家となると、神田小川町に江戸上屋敷を構える一方で、当地は下屋敷となった。その後、下屋敷の敷地はかなりの部分が返上され、そこに甲州街道の内藤新宿などが整備された。
明治5年、内藤家の屋敷地及び江戸時代に返上された元屋敷地を合わせた58.3haに、農業試験場の「内藤新宿試験場」が設置された。明治12年には宮内省管轄の「新宿植物御苑」となり、明治39年には現在のような庭園に改造され「新宿御苑」となった。昭和24年、国民公園となり一般公開。
日本庭園、イギリス風景式庭園、フランス式整形庭園や大温室などで構成された広大な庭園で、国の重要文化財である旧洋館御休所など、幾つか歴史的建造物も点在する。
北エリア
北エリアには、北西の新宿門と北東の大木戸門という二つの入口がある。
旧洋館御休所
旧洋館御休所は皇族の休憩所として明治29年竣工。国指定重要文化財。
当初は洋館または休憩所と呼ばれており、洋館御休所となったのは大正10年頃から。
建物内も公開されているが撮影禁止。
背後にある旧給湯罐室は大正11年竣工で、重文指定の附指定。
大温室
大温室は平成24年竣工。
玉藻池
玉藻池付近の日本庭園は、1772年に完成した信州高遠藩主内藤家の下屋敷の庭園「玉川園」の一部。
令和6年に、第二次大戦の空襲で焼失した大木戸御殿を復元予定。
旧門及び門衛所
現在の新宿門の東に旧新宿門が、大木戸門の手前に旧大木戸門があり、昭和2年当時の門柱と門衛所が残る。
旧新宿門衛所は昭和2年竣工。
旧大木戸門衛所も昭和2年竣工。
東エリア
イギリス風景式庭園
イギリス風景式庭園は明治39年完成。広い芝生の周囲に巨樹が育つ。
2022年には、当苑の歴史などを紹介するミュージアムが開館。
フランス式整形庭園
フランス式整形庭園も明治39年完成。バラ花壇を中心に据え、プラタナス並木が4列、左右対称に並ぶ。
なお、その正面には当苑の正門があるが、通常は閉鎖されている。
バラ花壇には110種500株のバラが植えられており、春と秋に見頃となる。
南エリア
千駄ヶ谷門はこのエリアの南端にある。
このRC造の擬木橋はフランス製で、明治37年のセントルイス万博で展示されていたものを購入し、同38年設置。
下ノ池の東端にて池に注ぐ細流上に掛かる。
ツツジ山は春に見頃となる。
西エリア
日本庭園
日本庭園は、明治期に造られた鴨池を、昭和初期に日本庭園に改造したもの。
日本庭園にある台湾閣(旧御涼亭)は東京都選定歴史的建造物。昭和天皇の御成婚記念に台湾から寄贈された中国建築で、昭和3年竣工。
新宿御苑の桜と菊
新宿御苑で催される伝統行事としては、戦前の皇室行事の流れを汲む3~4月の「春の特別開園」と11月の「菊花壇展」がある。
また、温室では11月に洋ラン展も開かれる。
春の特別開園
「春の特別開園」は毎年3月25日~4月24日で、この期間は無休となる。新宿御苑は桜で名高く、2月開花のカンザクラから4月下旬開花のカスミザクラまで、約65種1100本の桜が植栽されている。うち、特に4月中下旬の晩春の桜が「ベストシーズン」と銘打たれている(この時期の桜の大部分は関山、普賢象、一葉の3品種)。
皇室主催の観桜御宴は、明治14年に吹上御所で始まった。会場は後に浜離宮に移ったが、大正6年からは新宿御苑での開催となり、昭和13年まで続いた。現在は、4月上旬に内閣総理大臣の主催で「桜を見る会」が催されている。
菊花壇展
菊花壇展は、戦前の観菊会の流れをくむイベント。毎年11月1日から15日まで開催。観菊会は明治11年、皇室の行事として赤坂仮皇居で始まり、曲折を経て戦後に菊花壇展となった。この行事に関する詳細は「新宿御苑 菊花壇展」の記事を参照。