高尾山薬王院
高尾山薬王院は、東京都八王子市にある、真言宗智山派の三大大本山の一つ(その上に総本山として京都・智積院がある)。奈良時代の天平16年(744年)、聖武天皇の勅により行基が開山。薬師如来が本尊ゆえ薬王院と号した。
関東有数の山岳信仰の寺で、高尾山(599m)上に諸堂が立ち並ぶ。
南北朝時代の永和年間(1375-1379年)に飯縄権現を本尊として中興。神仏混淆の修験寺院であり、明治維新時の神仏分離では麓の登山口と山上の本社前にあった鳥居を撤去して寺院としての立ち位置を明確にした。
京王高尾線の高尾山口駅より徒歩3分でケーブルカーまたはリフトの乗降場に至る。山上の乗降場から伽藍までは20~30分であり、ケーブルカーの方が距離が短い(運賃は同額だが運転間隔が異なる)。また登山道も複数整備されている。
山麓
麓には別院に不動院のほか、火渡りも行われる自動車祈祷殿広場がある。
なお、高尾山駅近くにある赤い鳥居は、山麓の鎮守である氷川神社の鳥居である。この神社は明治維新時の神仏分離で薬王院から分離された。
麓の高尾山登山口にある、高尾山薬王院の別院。江戸時代は不動院の前に一ノ鳥居があった。
なお、この登山道(1号路)は表参道だが、山上のリフト乗降場まで、特段宗教色が濃いわけではない。
乗降場~中心伽藍
ケーブルカー乗降場付近には展望レストランやさる園・野草園といった商業施設が運営されている。
浄心門あたりから次第に寺院らしくなる。
根がタコのように曲がりくねった杉。山上のケーブルカー乗降場から参道沿いに少し進むとある。
浄心門の脇にある神変堂は、修験道の開祖役小角(役行者、神変大菩薩)を祀る。
有喜苑にある仏舎利塔には、タイから贈られた仏舎利を祀る。
仏舎利塔の前には、当寺の本尊である飯縄権現とその眷属である天狗の像が安置されている。飯縄権現は長野県の飯縄山が発祥の、狐に跨る、烏天狗のような風貌の神。
中心伽藍
山門(四天王門)は昭和59年建立。
仁王門は18世紀前期の築。東京都指定有形文化財。
大本堂は薬師如来と飯縄権現を祀る。明治34年築。
顔の青い烏天狗が小天狗、赤い鼻高天狗が大天狗。大天狗と小天狗は飯縄権現の眷属で、境内各所に像がある。
大師堂(旧大日堂)は18世紀前期の建立。東京都指定有形文化財。
本社鳥居前の斜面両側には、不動明王(飯縄権現の本地仏)の眷属三六童子のブロンズ像が立つ。
飯縄権現を祀る本社(飯繩権現堂)は大本堂から石段を登っていくとある。社殿は本殿・幣殿・拝殿を連結した権現造の神社建築で東京都指定有形文化財。
うち拝殿・幣殿は1753年築(彫刻は1805年付加)。
本社の本殿は1729年築(彫刻は1780年付加)。
天狗社は大小2社あり、健脚を祈って下駄の置物も奉納されている。
大本坊は大本堂の左手奥にある。門の奥に見えるのは大本坊の客殿。
大本坊の書院は昭和15年築。
弁天洞は大本坊の裏にある。穴弁天ともいい、奥には福徳弁財天が祀られている。
奥ノ院と山頂
奥ノ院は本社から更に石段を登っていくとある。奥ノ院以降は山頂まで、宗教色はほとんど感じられない。
本社から更に石段を登っていくと奥ノ院の不動堂(旧護摩堂を移築)がある。17世紀後期の築で東京都指定有形文化財(須弥壇が附指定されているが非公開)。
不動明王は当寺本尊である飯縄大権現の本地仏。
奥ノ院不動堂の背後には浅間社がある。大正15年築。
高尾山(599m)頂から見た東京方面の眺望。頂上には売店やトイレはあるが、薬王院の堂宇などは無い。
岩屋大師
高尾山の山中には、中心伽藍から離れた登山道沿いに、蛇滝と琵琶滝という2ヶ所の水行道場がある。道場の滝は水行者以外は近寄れないが、予約制で初心者も水行を体験できる。
うち琵琶滝では、その手前に岩屋大師がある。
岩窟に弘法大師が祀られている。