江戸城北の丸跡を整備した北の丸公園にある日本武道館は、1964年東京オリンピックの柔道競技会場として同年に建設された。設計は著名建築家の山田守で、外観は法隆寺夢殿をモデルにしている。日本武道館においては現代も様々な武道・武術イベントが開催される。1月の成人の日に毎年開催される鏡開き式・武道始めもその一つである。
日本武道館 鏡開き式・武道始め
武道の殿堂である日本武道館では、成人の日に鏡開き式・武道始めが毎年開催される。
開会式や国歌斉唱、挨拶・祝辞に続き、鎌倉時代の軍装での鎧着初め・三献の儀が行われる。
鎧着初式は鎧新調時と元服(成人式)で初めて鎧を着た時の儀式。本来は裸から完全武装する儀式だが、時間がかかるので武道館では鎧を既に着用の状態から始める。
三献(さんこん)の儀は出陣・凱旋・元服式・結婚式の時に酒を飲む儀式。中世(鎌倉~戦国時代)には武家の学問始め、元服、鎧新調、合戦の出陣式などで行われた。武道館で行われるのは大将軍の出陣式である。
陪膳所役が肴(打鮑、勝栗、昆布(撃つ、勝つ、喜ぶ)が各一皿と盃三重)を高坏で大将軍の前に置き、大将軍が肴の一皿を食する毎に長柄所役が酌をし大将軍が飲み干す。
武道館では武将らが祭壇に拝礼したのち、鏡餅と酒樽を割る。
近世には武士は正月の鏡餅に鎧を供え、鎧餅または具足餅と称した。武家の餅は現在の二重ねの饅頭型ではなく的の形であった。鏡開き式は正月の松飾りがとれる吉日に餅を撤去し砕いて雑煮などにする歯固めの行事で、餅を刃物で切ることを忌み、弓の弦で引き絞って切ったが、お汁粉にはせず(小豆は煮ると皮が破れるので腹を切るに通じる)、蕪(鏑矢に通じる)を入れた汁にした。鏡開きは新年の祝いじまいである1月20日に定着していたが、三代将軍家光の命日に当たったため承応元年に11日に改められた。また室町時代の鎌倉公方は正月15日に鏡開きを行った。
出陣では兜所役が大将軍に兜を付け、弓所役が弓を渡すと、大将軍が立ち上がり鬨の声を上げる(将軍が「えい!えい!」、家来一同が「おう!」と応じる)。
行進は前中後の3軍に分かれ、前軍が前駆、旗差、太鼓所役、前軍侍大将、一般の侍。中軍が前駆、旗差、楯持役、大将軍、侍、副将軍、侍。後軍が前駆、旗差、太鼓、後軍侍大将、一般の侍、の構成。
弓道、剣道、空手道、薙刀、相撲、銃剣道、合気道、少林寺拳法、柔道という、近代以降に成立した武道の模範演武が行われる。
その後、上記武道の一斉稽古が行われる。なお、稽古が終わると、おしるこ会が開かれてすべての行事が終了となる。