中井御霊神社は、東京都新宿区の、都営大江戸線・西武新宿線の中井駅より北西へ徒歩10分の地に鎮座する鎮守社。当社に関する詳細は中井御霊神社の記事を参照。
当社には農村儀礼であるオビシャ神事が残っており、毎年1月13日の午後に備射祭が執り行われる。なお、同日の午前中には北西へ徒歩12分の葛谷御霊神社でもおびしゃ祭が催される。
中井御霊神社 備射祭
中井御霊神社においては、1月13日(日程固定)に弓を引く備射祭(おびしゃまつり)が催され、新宿区の無形民俗文化財に指定されている。備射祭は五穀豊穣と安産を祈って弓を引く農村儀礼で、都市化が進んだ東京23区内にはあまり残っていない(関東でも東京都外では現在でも広く行われている)。
社務所から氏子らと社殿に到着した神職はまず本殿前で神事を行ったあと、参道上に設けられた的の前でお祓いを行う。的は、分木(竹製のコンパス)で描かれた三重丸の中心に2羽の鳥が描かれている。
年番(氏子の年男2名)が社殿前から、湯桶の甘酒で清めた弓を用いて、一ノ矢は東北の鬼門に、二ノ矢・三ノ矢は的に向けて射る。弓はエゴノキ製で、弦は麻、矢は女竹を用いる。矢が的に当たれば豊作である(かつては的に当たった矢を分木で測って農作物の豊凶を占った)。
矢は厄除け、家内安全として参詣者が拾う。
この後、氏子総代が交代で射る。
射撃は、拝殿内での儀式で少し間のあったのち、最後に宮司がまず東北の鬼門に向け矢を放ち、次に的にむけて放つ。
拝殿内では祝詞奏上、盃ごと、弓射の儀、祝宴の儀などが催される。カツノキで作った箸で田作り(鰯)とタクワンを食べ、甘酒を飲み、その間に分木、鯛・松竹梅の供物、オタカラを世話人間で回して、年番渡しを行う。最後に野謡を歌って一連の行事は終わり、神職や氏子らは社殿から社務所へ退出する。
なお、午前中の葛谷御霊神社でのおびしゃ祭と異なり、拝殿の扉は全て開け放たれて行事が進むため、儀式の様子はよくうかがうことができる。
オタカラなど
拝殿内での儀式では、オタカラ、分木、鯛・松竹梅の供物がそれぞれ三宝に載せられ、世話人間で回されたあと拝殿内に安置される。
オタカラ(「お宝」)は大根で男根を象ったもので子孫繁栄のシンボル。
分木は的の丸を描く竹製のコンパス(1563年・1620年製で区の有形民俗文化財)。
鯛・松竹梅の供物は、松竹梅の小枝を大根に挿し、鯛を盛って吉祥を表したもの。
祭礼終了後、神職の方からオタカラをこちら側に向けて見せていただいた。
拝殿の隅にも木製の男性器像が安置されていた。