浅草寺(東京都台東区)は聖観音宗の総本山(戦前は天台宗の別格本山)で、東京でも最も有名な観光スポットの1つ。当寺についての詳細は浅草寺の記事を参照。
浅草寺では1月12~18日の7日間、温座秘法陀羅尼会を修法するが、そのほとんどは非公開で、最終日夕刻の「亡者送り」のみが公開される。
浅草寺 亡者送り
浅草寺では1月12~18日の7日間にわたり、温座秘法陀羅尼会という除災招福の秘法を、本堂の一角で修法する。これは大晦日から1月6日にかけて行われる修正会に次ぐ浅草寺の正月行事で、岡山市の金山寺から正徳2年(1712年)に導入された。24時間間断なく7日間続けられ座も冷えることがないので「温座」、「千手千眼観世音菩薩広大円満無碍大悲心大陀羅尼」と唱えるため「陀羅尼会」である。浅草寺の本尊が聖観音であるにも関わらず、千手観音の陀羅尼文を唱えるのは、金山寺の本尊が千手観音だからだという。
温座秘法陀羅尼会のほとんどは非公開で、最終段階の18日18時頃の「亡者送り」のみ公開される。
「亡者送り」では、本堂内の明かりが消され、本堂から松明を持った鬼役の2人が現れ、境内を巡ったのち銭塚地蔵堂脇の穴に松明を投入する。その際、人々は松明の燃えカスを火除け・厄除けの縁起物として拾う。一連の行事は10分ほどの出来事。
この時期は、18時頃は完全に日が落ちている。
突然本堂の明かりが消え、ブザー音とともに本堂の階段上に松明を掲げた2名の鬼が現れる。
階段を降りた鬼はまず香炉に向かい、その回りを三周。
次に宝蔵門に向かい、その内側を三周。
次に銭塚地蔵堂に向かう。本堂の階段を降りてより銭塚地蔵堂に至るまで、松明を時々地面に打ち付けて燃えカスを地面に散らす。参拝者らはその燃えカスを拾って縁起物とする。かつては松明の火の粉で煙草を吸ったり、燃えさしを戸口にさげておくと疫病除けになるとされたと言われていたようだ。
最後は銭塚地蔵堂の脇の敷地に掘られた穴に、鬼が松明を投入して行事満了。鬼が登場してより10分ほどの出来事であった。この穴には、温座秘法陀羅尼会の修法中に魑魅魍魎や餓鬼に供せられた供物があらかじめ投入されている。この施餓鬼儀式により悪霊が鎮められ、年頭の除災招福の祈願が達成される。
なお、明治頃までは浅草寺境内には閻魔堂があって、その背後に供物用の穴を掘っていた。