川越の商家町
川越の商家町は、埼玉県川越市の、西武新宿線の本川越駅より北東へ徒歩10分、またはJR川越線・東武東上線の川越駅より北東へ徒歩22分の地に位置する、土蔵造の商家の町並み。
土蔵造の商家が並ぶので小江戸と呼ばれる。川越の町は室町後期に開かれ、江戸初期に城下町として整備され、川越街道の宿場や舟運でも栄えた。現在も、国選定重要伝統的建造物群保存地区をはじめとして、大正浪漫夢通りや菓子屋横丁でも統一感のある町並みを形成している。
重要伝統的建造物群保存地区
国の重要伝統的建造物群保存地区には、時の鐘一帯を中心として7.8haが選定されている。現在の土蔵造り商家の町並みは、明治の大火で町が焼失して以降に形成されたもの。
重伝建地区内のランドマーク・文化財建築ほか
松崎家は砂糖商(屋号・松崎屋)を営んだ。店蔵は明治34年竣工で川越市指定有形文化財。
龜屋(山崎家住宅)の店蔵と袖蔵は明治26年竣工で川越市指定有形文化財。背後にも幕末から明治にかけての建物が並ぶ。
龜屋(山崎家)の建物を利用。左は明治5年竣工の二番蔵、右は明治33年竣工の四番蔵。
川越市仲町観光案内所は明治26年竣工。米穀問屋であった旧入間屋(旧石川邸)の店蔵。
「龜屋 山崎茶店・茶陶苑」の山崎家は、和菓子屋龜屋の山崎家から明治10年頃に分家し、茶業を専業とした。通りに面した店蔵(明治28年上棟)と袖蔵(明治33年上棟)のほか、背後にある文庫蔵、便所、みそ蔵も川越市指定有形文化財だが立入禁止。
田中家住宅は大正4年上棟で川越市指定有形文化財。外観は洋風だが構造は土蔵造。旧桜井商店(槌屋)。
山吉ビルは昭和11年竣工でRC造。旧山吉デパート。
小林家は呉服・太物卸問屋であった。明治26年上棟の店蔵は川越市指定有形文化財。
小島家は呉服・太物商(屋号・相徳)を営んだ。店蔵は明治26年以降の再建で川越市指定有形文化財。
埼玉りそな銀行川越支店として利用されていたが2020年移転。大正7年竣工。旧第八十五銀行本店。国登録有形文化財。
服部民俗資料館は、傘・履物・薬種商の服部家(屋号・山新)により明治26年上棟。川越市指定有形文化財。
原家住宅の店蔵は明治27年上棟で川越市指定有形文化財。呉服商の山本平兵衛(足立屋)が建てたもの。
宮岡家住宅の店蔵は明治30年上棟で川越市指定有形文化財。宮岡家は金物商(屋号は・勘)が家業であった。
小谷野家住宅の店蔵は明治28年上棟で川越市指定有形文化財。太物商卸問屋の山仁商店を営んだ高山仁兵衛が建てたもの。
平岩・水飼両家住宅の主屋は明治26年竣工で川越市指定有形文化財。糸繭製茶煙草問屋「正木屋」を営む大川喜兵衛が建てた。
酒類販売業「熊重」を家業とする滝島家が建てた店蔵は明治28年上棟で川越市指定有形文化財。
時の鐘は城下町川越のシンボルで明治27年の再建。川越市指定有形文化財。高さ16mで、毎日6・12・15・18時に鐘が撞かれる。
蔵造り資料館は、煙草卸商(屋号・万文)を営んだ小山家の旧宅。
店蔵のほか、添屋、住居棟、一番蔵、二番蔵、三番蔵、便所棟、稲荷社、門及び塀が川越市指定有形文化財(店蔵は明治26年竣工だがその他の築年は不明)。
大沢家住宅は関東最古級の土蔵造住宅で、呉服商「近江屋」を営んだ西村半右衛門が1792年に建てたもの。国指定重要文化財。
岡家住宅(前・長島家住宅)は、明治蔵(北棟)が明治34年、大正蔵(南棟)が大正11年の竣工で、ともに川越市指定有形文化財。酒造業を営んだ岡家(屋号・近常)が建てたもの。
中成堂歯科医院は大正2年竣工の洋館。
福田家住宅は明治31年に川越貯金銀行として竣工。川越市指定有形文化財。重伝建地区をわずかに外れている。
穀物問屋「足立要」を営んだ原田家の住宅は明治30年竣工。川越市指定有形文化財。重伝建地区をわずかに外れている。
旧山崎家別邸は、龜屋の山崎家の隠居所として大正14年竣工。建物は国指定重要文化財、庭園は国登録記念物。重伝建地区をわずかに外れている。当所に関する詳細は旧山崎家別邸の記事を参照。
日本聖公会川越キリスト教会の聖堂は大正10年竣工で国登録有形文化財。重伝建地区から若干離れている。
田口家住宅の店蔵(川越市指定有形文化財)と住居は明治29年上棟。田口家は糸・組紐問屋「百足屋」を営んだ。重伝建地区から若干離れている。
太陽軒は昭和4年竣工。国登録有形文化財。重伝建地区から若干離れている。
そば百丈(旧湯宮釣具店)は三階建て看板建築。昭和5年竣工で国登録有形文化財。重伝建地区から若干離れている。
松本醤油商店の店蔵(川越市指定有形文化財)は、藩財政の実権を握った横田家の分家の横田醤油店を、松本家が明治22年に取得したもので、幕末の竣工だが建築当初から店蔵かは不明。天保蔵は天保初期(1830-1843年)の竣工。重伝建地区から若干離れている。
幕末に建てられた山下家住宅の住宅と内蔵(写真奥)は川越市指定有形文化財。重伝建地区から若干離れている。
塩野家住宅は明治27年上棟で川越市指定有形文化財。材木商「丹清」を営んだ梶田家の文庫蔵だった。重伝建地区から若干離れている。
大正浪漫夢通り
旧銀座商店街。アーケードもあったが撤去し、古い建物の景観が活きるよう整備された。北端で、重伝建地区の南東端と接続する。
大正浪漫夢通りのランドマーク・文化財建築ほか
大野屋洋品店は昭和5年竣工。
書店文具商の吉田謙授堂(吉田家住宅)は明治30年竣工。川越市指定有形文化財。
間仁田家住宅は昭和8年竣工。
小川菊は大正13~14年頃竣工。
伊勢源は明治末期の竣工。隣との間に煉瓦壁が立つ。
川越商工会議所は昭和3年竣工。旧武州銀行川越支店。国登録有形文化財。道路反対側は重伝建地区。
菓子屋横丁
約20軒の菓子屋などが並ぶ。ランドマークとなるような建物はないが、独特の懐かしい雰囲気がある。重伝建地区の北西端と近い。
地図
重伝建地区は赤で、大正浪漫夢通りは緑で、菓子屋横丁で青で示す。
中心部のその他の民家など
小江戸蔵里は鏡山酒造跡を商業施設等に整備したもの。明治中期竣工の明治蔵、大正初期竣工の大正蔵、昭和6年竣工の昭和蔵が残り、国登録有形文化財となっている。当所に関する詳細は小江戸蔵里の記事を参照。
旧佐々木医院は、本館、車小屋、門塀が昭和10年竣工。現在は隣に建てた新しい診療所で営業。
川越氷川神社の旭舎文庫は江戸末期~明治初期の竣工。旧梅原菓子店。現在は郷土案内館。
川越商工会議所旧館は昭和2年竣工。旧埼玉農工銀行川越支店。
三森整形外科内科医院は昭和6年以前の竣工。
カワモク本部事務所棟は丹徳木材店が昭和2年に銘木展示場として建設し、昭和12年頃に六軒町郵便局となった。国登録有形文化財。
丹徳庭園は丹徳木材店(現・カワモク)を営んだ鈴木家の住宅で、庭園が有料公開されている。
宮澤家住宅の主屋は明治26年竣工で川越市指定有形文化財。宮澤家の家業は照降商であった。