根津神社
根津神社は、東京都文京区の、東京メトロ千代田線の根津駅より北西へ徒歩5分の地に位置する鎮守社。
戦前の社格は東京府(東京都)の府社。また明治初期に一時的に存在した准勅祭社にも列格(准勅祭社12社のうち都区部の10社は現在は東京十社を名乗る)。
景行天皇40年(西暦110年)、東征中の日本武尊が創建。当初は千駄木内の別の所に鎮座していたが、江戸中期の万治年間(1658-1661年)、境内が太田摂津守(太田道灌の子孫)の下屋敷となったため東方に遷り、ほどなく更に団子坂上の元根津(現・本郷図書館)に遷座し、江戸中期の宝永3年(1706年)に徳川家宣邸跡である現社地へと遷座。
都心の神社では珍しく、江戸時代に建造された社殿が一式残り、国の重要文化財となっている。また、上野公園近くにあった森鴎外の旧居を境内に移築予定。
江戸中期の1706年に建立された楼門は国指定重要文化財。右側の随身は水戸光圀がモデルだと伝える。
楼門の随身のうち右側は、水戸光圀がモデルと伝える。
手水舎は屋根だけが木造。戦前は手水舎も1706年建立のものが残っていたが、その屋根部分だけ残ったものか。
唐門も1706年建立。国指定重要文化財。
拝殿も1706年建立。国指定重要文化財。社殿は拝殿・幣殿・本殿が連結された権現造であり、この3つが1棟として重文指定されている。
本殿も1706年建立。国指定重要文化財。
西門も1706年建立。国指定重要文化財。かつては御成門とも呼ばれていた。
透塀も1706年建立。国指定重要文化財。
なお、重文指定では、透塀は唐門と西門の所で分断されていると判断されて3棟(唐門東側、唐門~西門間、西門北側)の指定になっている。一方で北側と東側の潜門はあくまで透塀の一部として扱われている。
乙女稲荷から望んだ社殿。なお、当社も実際は空襲で焼夷弾を受け炎上している。戦災復旧修理工事の報告書に当時の写真が掲載されているが、柱や床は炭化し、屋根は焼け落ちて無くなっているのが確認できる。
銅灯籠2基が、社殿の重文指定の附指定となっている。
神楽殿は明治期の建立。
摂社駒込稲荷神社は、甲府藩主徳川邸時代の寛文元年(1661年)、屋敷稲荷として鎮座。
池は境内に3ケ所(境内南東、太鼓橋西、乙女稲荷前)ある。
うち境内南西のもの(上の写真)は、江戸時代は弁財天が祀られていた。
社務所は明治時代の建立。現在は撮影禁止になった。
水飲み場は、森鴎外が明治39年に奉納した砲弾台座を改造したもの。
大神輿は当社を産土神とした徳川家宣が献納したもの。3基あり全てが文京区の指定文化財。
この神輿が渡御するのは例大祭の本祭の年のみ。
乙女稲荷神社
鳥居のトンネルの参道をたどると鎮座する末社乙女稲荷神社は、根津神社が当地に遷座した宝永3年(1706年)以降の創建。
江戸時代までは穴稲荷と呼ばれていた。
乙女稲荷の名は、女の厄年である19歳の時に参拝すると良いとのことから、近代以降に定着した名前。
現在の社殿は昭和31年建立。池に面した懸造となっている。
旧称の穴稲荷の通り、社殿の背後には穴がある。
根津神社の祭神
根津神社の現在の主祭神は須佐之男命・大山咋命・誉田別命で、相殿に大国主命・菅原道真を祀っている。しかし江戸時代の様々な地誌では、根津権現(不寝権現)の主祭神はあくまでも須佐之男命である(旧町名の根津須賀町や、根津神社の別名が須賀神社であった事からもわかる)。そして、これら江戸期の地誌では、相殿を山王権現(つまり大山咋命)と八幡宮(つまり誉田別命)、または相殿を大国主命と蛭児命とする例が多い。
また、徳川家宣の家臣・根津宇右衛門が主君の行状を諫言して手討ちとなるも、霊となって諫言を続けるので、家宣が素行を改めると、宇右衛門も家宣の子孫の守護を約したので、一社を建立した、との異伝もある。
主な年中行事
初詣
根津神社の正月には、境内には露店が多少出るほか、フリーマッケットも行われる。
節分
2月3日に行なわれる根津神社の節分豆まきは、神楽殿において執り行われる。それほど大規模ではない。
つつじまつり
根津神社が1706年に現在地に遷座して来る前は、ここは徳川家宣(後に6代将軍)の邸宅であった。その邸宅に起源を持つつつじ苑にはツツジが約100種3000本植栽されており、例年4月中旬から5月初旬までつつじまつりが開催される。この行事に関する詳細は「根津神社 つつじまつり」の記事を参照。
夏越の大祓
根津神社の夏越の大祓では、6月30日の夕刻、神職が茅の輪の前で儀式を終えたあと、一般参列者と共に茅の輪を3度潜る。一般参列者は、境内のはるか外まで大行列を作る。
盆踊り
8月の中旬から下旬に、根津神社の境内で盆踊りが催される。
例大祭
例大祭は9月中旬。江戸三大祭だと称している。4年ごとの本祭では宮神輿が渡御。この行事に関する詳細は「根津神社 例大祭」の記事を参照。
根津・千駄木下町まつり
10月中旬頃、当社をメイン会場として、根津・千駄木内にある幾つかのサブ会場と共に開催される。境内には模擬店が出店し、和太鼓なども披露される。この行事に関する詳細は根津・千駄木下町まつりの記事を参照。
年越の大祓
年越の大祓では、12月31日の夕刻、神職が唐門前で儀式が行なわれる。