澤蔵司稲荷(慈限院)
慈限院は、東京都文京区にある浄土宗寺院。近くにある伝通院の元子院。山号は無量山。
境内にある澤蔵司稲荷の別当寺であり、港区の豊川稲荷東京別院などと同じく、明治維新時の神仏分離を乗り越え、神仏習合色を色濃く残す寺院である。
江戸城内の稲荷大明神が澤蔵司なる僧に化身して伝通院で修行し、元和6年(1620年)に霊夢で伝通院の守護となることを約し、沢蔵司稲荷として祀られた。同時にその別当寺として慈限院が創建された。
澤蔵司稲荷を祀る本殿・神殿は神社の社殿に近い形状で、神社のように(春秋に)例大祭が行われる。
なお、慈限院は浄土宗の寺院であるので、澤蔵司稲荷の堂では稲荷を祀っているが、本尊はあくまで阿弥陀如来である。
玉垣には、狐のレリーフも彫られている。
本殿への表参道の左側には木遣塚、右側には手水舎がある。手水舎は明治43年の建立。なお、江戸時代にはこの参道には鳥居があった。
本殿(神社の拝殿に相当)は昭和36年の、その背後にある神殿(神社の本殿に相当)は昭和30年の建立。
小祠であるが本地堂もあり、本地仏として十一面観音を祀っている。本地堂は、本地垂迹思想(仏が仮の姿として神として顕現する)に基づき、神を祀る社においてその本来の姿の仏を祀る堂である。本地堂は仏教建築の事が多いのだが、澤蔵司稲荷では神社建築である。
霊窟「お穴」へ下る参道沿いには朱塗りの鳥居が並ぶ。周囲は黒ボク石が配されている。祠は2017年に建て替えられた。
霊窟は、かつては狐が棲む穴と言われていた。
お穴のさらに奥へと参道は続く。
参道の終点には稲荷の小祠がある(写真は覆屋で、この中に社殿型の小祠がある)。
境外の一般道(かつては伝通院境内)に澤蔵司の魂が宿る神木とされるムクノキが取り残されている。樹齢約400年と言われ、文京区の天然記念物に指定されている。
節分会
澤蔵司稲荷では節分追儺式は、2月3日ではなくその直近の日曜日に催される(文京区のこの辺では節分をずらして催す神社が他にも数社ある)。社殿内で護摩を焚いたのち、豆まきをする。
文京朝顔・ほおずき市
7月中下旬頃開催の文京朝顔・ほおずき市では、伝通院で朝顔市が、源覚寺でほおずき市が立つ。その間、サブ会場の澤蔵司稲荷(慈限院)ではパフォーマンスなどが催される。この行事に関する詳細は「文京朝顔・ほおずき市」の記事を参照。