南蔵院
南蔵院は、東京都葛飾区の、JR常磐線及び京成金町線の金町駅より北へ徒歩16分の地に位置する、天台宗の寺院。
正式には業平山東泉寺南蔵院。
元慶年間(877-884年)、歌人・在原業平が隅田川で舟遊び中に舟が転覆、業平は写経した法華経とともに溺死者を塚(業平塚)に納めたが、その傍らに村人が業平天神社を創建した。貞和4年(1348年)、社の傍らに、別当寺の東泉寺として創建(業平天神社は明治初期に廃絶)大永年間(1521-28年)頃に南蔵院と通称。元禄6年(1693年)、墨田区吾妻橋の業平橋付近へ移転。昭和8年、聖徳寺があった現在地へと移転した。
現在の諸堂は戦後に再建されたものだが、境内は良く整っている。またしばられ地蔵で有名。
山門は平成2年建立。
本堂は昭和53年の建立で、本尊は釈迦如来。
本堂前には樹齢450年に聖徳の松が茂る。
太子堂は昭和55年の、地蔵堂は同43年の建立。
しばられ地蔵尊は、盗難除け、足止め、厄除け、縁結びなどの霊験で知られる。1701年造立の石地蔵で、この地蔵に願をかける際に縄で縛り、願が成就すれば縄を解く。そのため、縄で巻かれていない姿を拝見する機会は、縄解きの行われる大晦日のわずかな時間のみである。
しばられ地蔵尊の由来に関する説話は以下のような流れとなっている。
- 江戸時代、呉服問屋の反物が南蔵院境内で盗まれる
- 大岡越前が「黙って見ていた地蔵も同罪」と縄打って奉行所へ引き立てる
- 引き立てられた地蔵の姿を見て野次馬が奉行所に集まる
- 奉行所乱入の罪で野次馬に反物を納付させる
- その中に盗品があり盗人を見事検挙する
- 大岡越前が霊験に感謝し地蔵の縄を解き供養
鐘楼脇の銅製宝篋印塔は明治25年鋳造。
地蔵堂の背後には曼荼羅の世界を表現した庭園が整備され、水琴窟などがある。
曼荼羅庭園の壁越しには茶室苔庵があり、茅葺きの屋根も見える。
しばられ地蔵尊の縄解き・初縄かけ
しばられ地蔵尊の縄解き・初縄かけでは、大晦日からしばられ地蔵尊の縄解き供養が行われ、新年の到来と共に新しい縄がまかれる。この行事の詳細については、しばられ地蔵尊の縄解き・初縄かけの記事を参照。
参考:都内のその他のしばられ地蔵
しばられ地蔵は東京都区部には南蔵院だけでなく、文京区の林泉寺や品川区の願行寺にもある(ただし、南蔵院のものが最も良く知られ、またサイズも大きい)。
品川区・願行寺のしばり(しばられ)地蔵尊
かつては首を残して地蔵が縄で隠れるほど縄で巻かれたが、現在は胴に少しだけ巻く。地蔵は首を取ることができ、願かけ人は首を持ち帰って祈願し、願いが叶えば首を2つ奉納するため、周囲には地蔵の首が置かれている。当寺についての詳細は願行寺の記事を参照。
文京区・林泉寺の縛られ地蔵尊
南蔵院のものと同様、願かけの時に地蔵を縛り、叶えられれば解く。