小野神社
小野神社は、東京都府中市の、京王線の中河原駅より北へ徒歩8分の地にある鎮守社。
由緒は多摩市の小野神社と同じものあり、安寧天皇18年(BC531年)に、武蔵国開拓の祖神である天下春命を祀って創建されたと言うもので、多摩市の小野神社は当社が元との伝承に基づく。一方で、逆に府中市の小野神社は多摩市の小野神社から勧請されたとの伝もある。
また垂仁天皇3年(BC27年)に創建されたという伝承もある。
拝殿は大正13年築。
本殿は江戸後期の1841年築。
府中市の小野神社と多摩市の小野神社
延喜式神名帳(平安時代の官社のリスト)には「小野神社」の記載があり、これが多摩市のと府中市のどちらの小野神社が該当するのか(つまり式内社であるのか)、諸説ある。『武蔵国式内社の歴史地理』には、江戸時代は府中市の社が、明治以降は多摩市の社が有力とされたとある。
両社については、片方からもう片方へ勧請または遷座したとの伝承が、双方向で存在する。
例えば『続 府中の風土誌』に紹介されている伝承では、現・府中市内の小野神社は天正(1573-1593年)頃と文禄5年(1596年)の多摩川の洪水で村ごと流され、村民は現・多摩市内に移住しそこに小野神社を建てたが、後に村民の一部は旧地に戻って村と神社を再建したといい、神社の再建は貞享3年(1686年)とも宝暦年間(1751-1764年)とも言われているとする。
なお、『特別展 武蔵国一之宮 多摩市一ノ宮小野神社の変遷』によると、府中市の小野神社側には戦災や水災で府中市から多摩市へ小野神社が遷座した伝承があるものの、多摩市の小野神社側にはそのような遷座の伝承はない、としている。
また、江戸期の地誌『武蔵名勝図会』で引用されている大国魂神社の社記では、往古、多摩市の小野神社が府中市に遷座し、武蔵国造が国府を開くに際してこの府中市の小野神社を大国魂神社に遷座合祀し、現在も大国魂神社の東殿に祀られていると記している。
両社とも式内社小野神社の論社ではあるが、武蔵国一宮についてはほぼ多摩市の方しか挙げられない。しかし『府中の風土誌』『続 府中の風土誌』では府中市の小野神社が武蔵国一宮である可能性にも言及している。また上述の大国魂神社の社記では、大国魂神社に祀られている小野明神は、府中市の小野神社から遷座合祀したことになっている。