法華経寺
法華経寺は、千葉県市川市の、京成本線の京成中山駅より北東へ徒歩4分の地に位置する、教団日蓮宗の七大本山の一つ(その上に総本山として山梨の久遠寺が位置する)。当寺は日蓮宗の祈祷根本道場で、宗祖日蓮が百日説法を行った日蓮最初の転法輪の霊跡。
鎌倉時代の文応元年(1260年)、当地の領主である富木常忍と太田乗明に迎えられた日蓮が、富木常忍の館の傍らに法華堂を開堂し、百日百座の説法を成した。また日蓮は文永元年(1264年)に現・鴨川市の小松原で法難に遭うが、顕現した鬼子母神に助けたことから、法華堂の地にて自刻の鬼子母神像を祀った。弘安5年(1282年)の日蓮没後、富木常忍は自邸の法華堂を法華寺と改めた。一方、太田乗明はその息子が自邸の持仏堂を本妙寺と改め、室町時代の天文14年(1545年)にこの2寺が合併して法華経寺となった。
宗門内でも中山門流という祈祷色が濃い流派の中心的存在で、第二次大戦後は一時、日蓮宗から離脱して中山妙宗を立ち上げたが、後に復帰した。
境内には多くの堂宇が並び、うち五重塔や大規模な祖師堂など4棟は国の重要文化財に指定されており、本山級寺院に相応しい様相を見せる。
総門(黒門)は江戸初期の建立。市川市指定有形文化財で、それに扁額が附指定されている。
三門(仁王門)は大正15年築の二重門。
山門から入った表参道沿いには子院が並ぶ。
龍淵橋は明治20年架橋。反り石橋で、欄干には鬼子母神の象徴であるザクロの実の意匠が施されている。
宗祖日蓮を祀る祖師堂は国指定重要文化財。江戸前期の1678年上棟。比翼入母屋造(入母屋屋根を二つ連結する造り)の大型建築で、屋根は杮葺き。
比翼入母屋造の寺社建築は全国的に数少ない(が少なくとも5点はある)。
祖師堂の前には香炉、浄行菩薩堂、手水舎、星乃井が並ぶ。
五重塔も国指定重要文化財。江戸初期の1622年築。
絵馬堂は昭和43年築。
絵馬の中には銭額などもある。
妙見堂は昭和40年代の建立。
龍王池に浮かぶ島には八大龍王を祀る社殿がある。
刹堂(旧鬼子母神堂)は鬼子母神・十羅刹女・大黒天を祀る。拝殿の背後には土蔵造の本殿(覆屋?)がある。
四足門も国指定重要文化財。鎌倉の愛染堂より鎌倉時代の文永年間(1264-1275年)に移築したと伝えるが、様式から室町後期の築と推定される。
法華堂(四貫堂)も国指定重要文化財。法華経寺開基である富木常忍が自邸の傍ら(現在の奥ノ院)に文永年間(1264-1275年)に建立し宗祖日蓮が百日説法を行った建物と伝えるが、様式から室町後期に再建(または改修)されたものと推定されている。日蓮宗独自形式の本堂では現存最古。
宇賀神堂は宇賀神弁財天を祀る、当寺の鎮守社。拝殿・幣殿・本殿(覆屋?)を連結した神社建築に近い。
戦国武将の加藤清正は熱心な法華経信者であったことで有名で、日蓮宗系寺院では清正を祀っている所も少なくない。
中山大仏(釈迦大仏)は1719年鋳造。高さは3.4m(台座込で4.4m)。
聖教殿は昭和6年築でRC造。設計は伊東忠太。日蓮の遺文が保存されている。
聖教殿に隣接して、修行僧が荒行に入る時と満了した時のみに開かれる瑞門が立つ。
大荒行堂(常修殿)は明治20年築。
寺務所・客殿・僧坊を兼ねる本院は平成9年竣工。
この三重小塔は、滋賀県・西明寺の三重塔の1/10縮小模型。
本院の奥に、拝殿と八角堂を連結した鬼子母大尊神堂がある(が、八角堂は見えない)。
銅製多宝塔は江戸後期の1809年建立。
銅製の万霊供養塔は昭和6年建立。
本阿弥家は熱心な法華経信者で京都に居を構えたが、当寺にも分骨を収めている。現在は本阿弥家分骨墓3基と本阿弥光悦分骨墓が市川市指定文化財となっている。
年中行事
法華経寺は日蓮宗の祈祷根本道場で、毎年11月1日に入行会してから翌年2月10日まで、修行僧らによる百日間に渡る荒行が行われることで知られる。
また2月3日の節分会豆まきや11月15~18日の御会式も比較的大きな祭礼。
龍口寺に移築された鐘楼
神奈川県藤沢市の龍口寺には、法華経寺から移築された鐘楼がある。なお、法華経寺には現在、RC造の鐘楼が再建されている。
この鐘楼は明治14年に法華経寺に建立され、龍口寺に昭和44年に移築された。国登録有形文化財。
法華経寺周囲の子院など
法華経寺の周囲には十数ヶ寺の子院など関連寺院が分布する。主な寺としては、法華経寺の奥之院、荒行堂がある遠寿院、法華経寺四院家がある。
遠寿院
遠寿院は、法華経寺の表参道沿いにある有力寺院。法華経寺とは別に荒行堂を持ち、同一期間、法華経寺とは独立して荒行を行っている。当寺に関する詳細は遠寿院の記事を参照。
法華経寺奥之院
法華経寺の奥之院は、法華経寺の開基となった当地の領主富木常忍の館跡。法華経寺の元となった法華堂はこの館の傍らに建てられ、日蓮没後は法華寺となり、更に後年、本妙寺と合併して法華経寺となった。当寺に関する詳細は法華経寺奥之院の記事を参照。
安世院
安世院(あんせいいん)は、法華経寺の子院の中でも特に有力な四院家の一つ。法華経寺の表参道沿いにある。本堂は明治32年築。
本行院
本行院は、法華経寺の子院の中でも特に有力な四院家の一つ。法華経寺の龍王池の裏にある。
浄光院
浄光院は、法華経寺の子院の中でも特に有力な四院家の一つ。法華経寺の五重塔から車道を隔てた反対側にある。
法宣院
法宣院は、法華経寺の子院の中でも特に有力な四院家の一つ。法華経寺から奥之院へ向かう途上にある。