洗足池と寺社
洗足池は、東京都大田区の、東急池上線の洗足池駅より北へ徒歩2分の地にある風光明媚な湧き水の池。一帯は大田区立洗足池公園として整備され、東京都指定名勝となっている。池畔には洗足池弁財天(厳島神社)、千束八幡神社、妙福寺といった寺社や勝海舟墓、西郷隆盛留魂碑がある。
洗足池。対岸に見えるのは厳島神社。
洗足池弁財天(厳島神社)
洗足池弁財天(厳島神社)の創建年代は不詳だが、いつしか池中に没していた。しかし多くの人々に弁財天の夢告があったため、昭和9年に弁天島を築いて社殿を造営した。例大祭は5月下旬。
洗足池弁財天は洗足池の北端に浮かぶ弁天島に鎮座する。
社殿は基本的には神社建築だが、花頭窓があり仏教風の要素が見られる。
千束八幡神社
千束八幡神社は貞観2年(860年)に大分県の宇佐八幡宮から勧請。社殿は昭和戦前期に建造されたもの。
例大祭は9月上旬で、洗足池の秋祭とも呼ばれ、多数の露店が出る。
社前には源頼朝が洗足池辺りで捕えたと伝える名馬「池月」にちなんだ橋が架かる。
一ノ鳥居は池に面している。
拝殿は昭和11年建立。
幣殿・本殿は昭和17年建立。
神楽殿は昭和2年建立。
御松庵妙福寺
妙福寺は池畔の日蓮宗の寺院。鎌倉時代の弘安5年(1282年)、宗祖日蓮が当地を通りがかった際に洗足池の畔で休息し足を洗うと、池から七面天女が現れたので、後に七面天女を祀って御松庵(ごしょうあん)という寺を開創した。また一方、妙福寺は江戸時代初期の寛永年間以前に日本橋馬喰町に創建され、浅草に移転の後、関東大震災で被災し、昭和2年(1927年)に当地の御松庵と合併して移転してきた。
当地の古名は「千束」だが日蓮が足を洗ったため「洗足」となったと伝える。
山門は昭和41年の、門番小屋は昭和43年の建立。
祖師堂(旧七面大明神堂)は江戸時代後期の1833年建立。国登録有形文化財。
庫裏は昭和3年建立。
日蓮が足を洗う際に袈裟を掛けた松。現在の木は三代目。
勝海舟墓・留魂祠
明治24年、池の風光明媚を愛した勝海舟が池の畔に別邸を構えた。邸宅は第二次世界大戦後に焼失し、勝夫妻の墓のみが残る。
海舟は遺言でここに葬られ、後に妻の民子の墓を青山墓地から移設。大田区指定史跡。
勝の墓の隣にある西郷隆盛留魂祠は、西郷が西南戦争で倒れた後、勝が明治16年、葛飾区の浄光寺に、西郷の魂魄を招祠して留魂碑とともに建てたもの。大正2年の荒川放水路開削で当地に移設。
神奈川県伊勢原市の大山阿夫利神社社務局に鎮座する末社勝海舟神社は、洗足池畔にあった勝海舟別邸の祠を昭和50年に移築し、勝海舟を祀ったもの。
大田区立勝海舟記念館
大田区立勝海舟記念館(旧清明文庫)は昭和8年建造で国登録有形文化財。
洗足池の年中行事
3~4月 桜祭
洗足池周辺には約200本の桜が植えられている。3月末~4月初旬にかけては花見客が集まり、露店も出る。
5月 春宵の響
5月には春宵の響(しゅんしょうのひびき)と称して、千束八幡神社前の池月橋で和楽器の演奏などが催される。なお、5月には洗足池弁財天の例大祭も催される。
7月 御松庵妙福寺 灯篭流し
御松庵妙福寺の灯篭流しは7月16日(曜日に関わらず日程固定)で、先祖供養のため約600の灯籠が池面に流される。
7月 ほたるのゆうべ
7月下旬に催されるほたるのゆうべでは、約3000匹のゲンジボタルが池に放たれる。
9月 千束八幡神社 例大祭
千束八幡神社の例大祭(洗足池の秋祭り)は9月上旬で、毎年、宮神輿が渡御する。この行事に関する詳細は「千束八幡神社 例大祭」の記事を参照。
10月 御松庵妙福寺 御会式
御松庵妙福寺の御会式は10月17日(曜日に関わらず日程固定)で、宗祖日蓮の法要のため万灯が練り供養する。
洗足池からの移設物
長勝寺 日蓮像
鎌倉市の長勝寺には、洗足池畔から移築された、高村光雲作の日蓮像が立つ。
大山阿夫利神社末社 勝海舟神社
神奈川県伊勢原市の大山阿夫利神社社務局にある勝海舟神社は、勝海舟別邸にあった祠を昭和50年に移築して勝海舟を祀ったもの。