水稲荷神社
水稲荷神社は、東京都新宿区の、都電荒川線の面影橋停車場からは北西へ徒歩4分、または東京メトロ東西線の早稲田駅から北東へ徒歩10分の地に位置にする鎮守社。
平安時代の天慶4年（941年）、藤原秀郷が平将門を討伐後、旧社地（現・早稲田大学）に冨塚稲荷を創建。また太田道灌が榎（椋？）を富塚の側に植えたことを聞いた上杉朝良が文亀元年（1501年）、榎の側に稲荷社を創建したとも伝える。
元禄15年（1702年）、神木の椋の幹の空洞より霊水が湧いたので水稲荷神社と呼ばれるようになった。また高田稲荷とも呼ばれた。昭和38年、旧社地（現・早稲田大学9号館裏）から清水徳川家下屋敷跡である現在地に遷座。このとき、旧社地にあった富塚および富士塚も移された。
社殿は昭和38年の遷座時に建立。
根巻（鳥居の足元部分）が擬木となっている少し変わった鳥居もある。
茶室聴松亭は清水徳川家の遺構で、遷座の際に甘泉園より移築された。
高田富士は、江戸中期の1780年に築造された江戸最古とされる富士塚を、昭和38年の遷座の際に旧社地から移したもの。ただし遷座のとき高田富士は失われ、現在の富士塚は新造されたものととらえる者もおり、その立場からは富塚富士とも呼ばれる。富士塚の一合目には浅間神社里宮の、五合目には小御岳神社の、頂上には浅間神社奥宮の祠がある。
この富士塚は通常は登拝できないが、7月の海の日およびその前日に催される高田富士祭にて登拝が可能。
社殿背後にある冨塚古墳もまた、遷座の際に旧社地から移された。稲荷が祀ってある。
冨塚（戸塚）の名の由来は、当地に古墳が多かったので十塚と言ったのが変じたとか、塚から金銀の遺物が出たので富塚と言った、などの説がある。
髙木神社は文亀年間（1501-04年）の創建で、高木神（高御産巣日神）を祀る。
その手前の石祠は三島社で、当地の地主神。源頼朝が創建したと伝え、徳川清水家が当地に屋敷を構えて以降はその守護神となっていた。
北野神社は、もとは牛込天神町にあった天満宮。
宮神輿は大正11年製作。
年中行事
当社の主な行事としては、以下のようなものがある。
初午祭
旧暦2月初午の日にはオビシャ神事（矢を射てその年の豊作などを占う神事）が行われる。この行事に関する詳細は「水稲荷神社 初午祭」の記事を参照。
高田富士祭
7月の海の日とその前日には、前述のように高田富士が山開きされ登拝可能となる。この際、納涼盆踊りも催される。この行事に関する詳細は「水稲荷神社 高田富士祭」の記事を参照。
例大祭
当社の例大祭は9月上旬で、三年に一度の大祭では本社神輿が渡御。この行事に関する詳細は「水稲荷神社 例大祭」の記事を参照。
宮元講の大神輿と小神輿は、そこそこ珍しい八棟造。
冬至祭
12月の冬至の日から翌年の節分まで、近くの穴八幡宮および放生寺と同じく、一陽来復守を授与。
関東稲荷総領職
『東京都神社名鑑』によると、江戸時代中期の天明8年（1788年）、京都御所炎上の折に当社の祭神が翁姿で現れ防火に努めたので関東稲荷総領職を賜ったという。
関東の稲荷の総社を名乗った神社としては、北区の王子稲荷神社と文京区の妻恋神社が有名であるが、水稲荷神社はほとんど知られていない。その他、中央区の鉄砲洲稲荷神社も関東総司稲荷神社を称したという。
明治の神仏分離までは、宝泉寺（西早稲田1-1-2）が別当寺であった。
近くには甘泉園公園や亮朝院などがある。