谷中の寺町
谷中の寺町は、寛永寺などが位置する上野桜木に隣接し、谷中霊園を中心に、荒川区西日暮里三丁目に跨って60以上の寺院が連なる大規模な寺町。東京には多くの寺町があるが、この規模で、かつ第二次大戦での戦禍を大きく免れたのはここだけである。ただし、明治維新時の上野戦争では戦場となったため、堂宇は主に明治以降に再建されたもの。
江戸時代の前は寺院はわずかであったが、江戸の町が拡大するにつれ急増し、特に明暦3年(1657年)の明暦大火以降は増え、宝永年間(1704-1710年)には現在と同規模の寺町となった。
下町風俗資料館付設展示場
下町風俗資料館付設展示場は、明治43年竣工の旧吉田屋酒店を整備したもの。台東区指定有形民俗文化財。
旧平櫛田中邸
旧平櫛田中邸は、彫刻家平櫛田中(1872-1979年)の旧邸。アトリエは大正8年、住居は同11年の竣工。
現在は平櫛田中の出身地である岡山県井原市の所有で、時々公開される。
上野桜木あたり
上野桜木あたりは、旧塚越家住宅・貸家の3棟(昭和13年竣工)を店舗等に活用した施設。
一乗寺
一乗寺は、小寺ながら立派な堂宇を有する日蓮宗寺院。天正18年(1590年)頃創建。
諸堂は戦前に整備された。当寺に関する詳細は一乗寺の記事を参照。
本光寺
本光寺は小規模な日蓮宗寺院。寛永7年(1630年)創建。
本堂は大正13年に修復された土蔵造(建造は江戸時代か)。
玉林寺
玉林寺は、曹洞宗の寺院。天正19年(1591年)創建。
本堂は、江戸時代の寛永年間(1624-1645年)築とする資料と、明治29年築とする資料がある。
樹齢600年以上のスダジイがあり東京都指定天然記念物となっているが、寺の人に頼まないと見ることができない所にある。
本寿寺
本寿寺は、日蓮宗の寺院。慶長19年(1614年)創建。
『下谷區史』によると、本堂は江戸末期、祖師堂は1825年の建立だが、現存のものがそうかは未確認。
臨江寺
臨江寺は、臨済宗大徳寺派の寺院。寛永7年(1630年)創建。
国指定史跡の蒲生君平墓もある。当寺に関する詳細は臨江寺の記事を参照。
SCAI THE BATHHOUSE
SCAI THE BATHHOUSEは、銭湯(昭和26年竣工の旧柏湯)を転用したギャラリー。
瑞輪寺
瑞輪寺は、日蓮宗の49本山の1つ。谷中は日蓮宗寺院の割合が高いが、その中心的寺院。
当寺に関する詳細は瑞輪寺の記事を参照。
本妙院
本妙院は日蓮宗の寺院。元和元年(1615年)創建。
本堂は文政年間(1818-1830年)の建立。山門脇の小祠には、男性器型の金勢明神が祀られている。
延寿寺
延寿寺は日蓮宗の寺院。明暦3年(1657年)創建。
境内の日荷堂は健脚の神様を祀り、堂内に多くの履物絵馬が奉納されている。
当寺に関する詳細は延寿寺の記事を参照。
妙行寺
妙行寺は日蓮宗の寺院。江戸初期の創建。
摩利支天堂が若干変則的な形状をしている。本堂は江戸中期の1750年建立。
蓮華寺
蓮華寺は日蓮宗の寺院。寛永7年(1630年)創建。
赤門は創建当時のものか。また本堂は文政年間(1818-1830年)頃の建立。
頤神院
頤神院は臨済宗妙心寺派の寺院。明和5年(1768年)創建。
本堂は明治後期の建立。
長久院
長久院は真言宗豊山派の寺院。慶長16年(1611年)創建。
観智院
観智院は真言宗豊山派の寺院。正式には初音山東漸寺観智院。
慶長16年(1611年)、神田北寺町に醫王山東漸寺圓照院として創建。慶安元年(1648年)に谷中清水坂(現・池之端)に、万治年間(1658-60年)に現在地に移転。元禄11年(1698年)に院号を、昭和24年に山号を、現在名に改めた。
明治41年に建立された、不動堂と大師堂を連結した変則的な小堂は、大師堂内に収められた厨子が拝見できる(ただし境内は幼稚園となっているので閉園中のみ)。
また本堂は福島県から佐竹家の祈願所を昭和25年に移築したもの。
立善寺
立善寺は日蓮宗の寺院。元和2年(1616年)創建。
本堂は1705年の、山門は1773年の建立。境内は幼稚園となっており、日頃は入ることは出来ない。2月10日の星まつりでは後述のように水行が行われる。
大円寺
大円寺は日蓮宗の寺院。天文年間(1532-1555年)創建。
本堂は、瘡守堂と連結された変則的な造り。
当寺に関する詳細は大円寺の記事を参照。
妙円寺
妙円寺は日蓮宗の寺院。慶長4年(1599年)創建。
谷中の寺の中では広い境内を持ち、江戸時代から昭和初期にかけて整備された諸堂を有する。
当寺に関する詳細は妙円寺の記事を参照。
すぺーす小倉屋
すぺーす小倉屋は旧小倉屋質店。大正5年竣工の蔵と、江戸末期竣工の店舗は国登録有形文化財。
観音寺
観音寺は新義真言宗の寺院。慶長16年(1611年)創建。
江戸末期築造の築地塀と江戸後期建立の客殿は国登録有形文化財。
当寺に関する詳細は観音寺の記事を参照。
竜泉寺
竜泉寺は日蓮宗の寺院。元和7年(1622年)創建。
谷中霊園
谷中霊園は、天王寺の境内を明治に接収して開発された霊園。桜の名所でもある。また、園内に残された寛永寺墓地には徳川家などの立派な墓も残る。
当所に関する詳細は谷中霊園の記事を参照。
天王寺
天王寺は、瑞輪寺と並ぶ、谷中地区の代表的な寺院。
当寺に関する詳細は天王寺の記事を参照。
安立院
安立院は曹洞宗系の単立寺院。ただし戦前は天台宗で、明治維新までは天王寺の子院であった。
朝倉彫塑館
朝倉彫塑館は、著名な彫刻家であった朝倉文夫の旧邸宅兼アトリエを公開。建物群は国登録有形文化財、庭園は国指定名勝。
当館に関する詳細は朝倉彫塑館の記事を参照。
宗林寺
宗林寺は日蓮宗の寺院。16世紀後期創建。
萩寺の異名の通り、萩が多く植栽されている。鐘楼は大正11年建立。
本行寺
本行寺は日蓮宗の寺院。大永6年(1526年)創建。
昭和6年移築の山門(付・門番所及び築地塀)は荒川区登録有形文化財。
経王寺
経王寺は日蓮宗の寺院。明暦元年(1655年)創建。
1836年建立の山門は荒川区指定有形文化財で、上野戦争時の弾痕が残る。庭園も整っている。
当寺に関する詳細は経王寺の記事を参照。
延命院
延命院は日蓮宗の寺院。慶安元年(1648年)の創建。
本堂は明治28年建造。七面堂と庫裏の一部は江戸時代のもので、七面堂には上野戦争の痕があるという。3堂が一列に並ぶ、若干変則的な堂宇の配置となっている。
当寺に関する詳細は延命院の記事を参照。
養福寺
養福寺は真言宗豊山派の寺院。江戸時代中期の創建。
宝永年間(1704-1710年)に建てられた山門は荒川区指定有形文化財で、谷中・西日暮里で唯一の仁王門である。この山門以外は戦災焼失し、戦後の再建。
諏方神社
諏方神社は谷中及び日暮里の鎮守。社殿は戦災焼失したが、多くは木造で再建されている。また大正15年に建造されたRC造の神輿庫が残る。
当社に関する詳細は諏方神社の記事を参照。
青雲寺
青雲寺は臨済宗妙心寺派の寺院。宝暦年間(1751-64年)中興。
この寺は戦災焼失しており、現在の外観二重の本堂は昭和35年の再建。
修性院
修性院は日蓮宗の寺院。天正元年(1573年)創建。
『日暮里の民俗』によると、本堂は昭和10年建造のRC造建築で、第二次世界大戦の空襲で外枠以外焼失し、後に改修したもの。ただし、戦後に建て替えられたとする資料もある。当時の本堂が現存するならば、比較的珍しい戦前のRC造の社寺建築である。
南泉寺
南泉寺は臨済宗妙心寺派の寺院。元和2年(1616年)創建。
本堂は昭和36年頃の再建。庭園には、性器型の「おまねぎ様」が祀られた小堂がある。
その他の谷中の風景
谷中の年中行事
諏方神社 初詣
諏方神社はJR西日暮里駅にほぼ隣接して鎮座しているが、谷中及び日暮里の鎮守である。境内には多数の行灯が灯され、お焚きあげもなされる。
旧吉田屋酒店 獅子舞
旧吉田屋酒店(下町風俗資料館付設展示場)では正月行事として1月3日頃に獅子舞が奉納される。
諏方神社 どんど焼き
諏方神社では1月中旬頃にどんど焼きが催される。神事の後に正月飾りを焚き上げ、その炎で餅を焼く。
立善寺 星まつり
2月10日には立善寺において星まつりが開催され、水行が行われる。
妙行寺 水行
2月11日には妙行寺において水行が行われる。
瑞輪寺 荒行成満国祷会
2月19日には瑞輪寺において、荒行成満国祷会が催される。水行式が行われた後、国祷会と七面大明神祈願祭が執り行われる。
諏方神社 納涼踊り大会
諏方神社境内では夏に納涼踊り大会と称して盆踊りが催される。
谷中ひゃっこい祭り
谷中ひゃっこい祭りは谷中銀座商店街主催の催し物で、商店街で盆踊りなどが催される。なお、このほか、谷中地区内ではないが、JR日暮里駅の東口でも盆踊りが別の日程に催される。
諏方神社 例大祭
谷中及び日暮里の鎮守諏方神社の例大祭は8月下旬(宮神輿の渡御は3年ごと)。
谷中まつり・谷中菊まつり
10月中旬頃、谷中まつりと谷中菊まつりが同時に開催される。
谷中まつりは、防災広場「初音の森」をメイン会場に、ステージショーなどが催される。谷中菊まつりは大円寺にて菊花市が立つ。詳細は「大円寺 谷中菊まつり」の記事を参照。
青線はお勧めルート。